中北浩爾『日本共産党――「革命」を夢見た100年』(中公新書。2022)  残日録230925

政治と関わりのなかった私だが、知人の大橋通伸氏が滋賀県議会議員選挙に出馬されて、3期12年(2011~2022)の議員生活を送られた関係で、立憲民主党関係の選挙の手伝いをしたことがある。
日本共産党との選挙協力のこともあって、めったにないことだが、立民の関係者から、日本共産党についてどう思うか、とか、どう考えるか、と聞かれることがある。日本共産党の支持者の中にも、私の図書館についての考えを支持してくださる人がいるから、簡単に返事ができることではない、ととりあえずは言っておくことが多い。組織としての「民主集中制」への疑問の程度は言うこともある。
先の大塚の『「日本左翼史」に挑む 私の日本共産党論』において、「客観性と学術研究に裏づけされている」と評価された中北の本書を読んだ。

大国主義・覇権主義や人権問題を理由に中国を社会主義と無塩の国と批判しながら、以前として同じ共産党を名乗っている。共産主義のイデオロギー的な魅力が減退したのであれば、党首選挙なので参加の要素を高めることが当院の獲得につながるはずだが、民主集中制の組織原則が足枷となっている。野党共闘についても、アメリカ帝国主義と大企業・財界を基本的に「二つの敵」とみなす民族民主革命論が妨げになって、安定した野党連合政権を樹立する見通しを持てないでいる。
日本共産党が路線転換するとすれば、一つの選択枝は、イタリア共産党のような社会民主主義への移行である。
安定した連合政府の担い手になるためには、日米同盟や自衛隊の役割を承認するなど現実化が不可欠であり、平和や福祉の実現を目指しながらも、アメリカや大企業・財界と一定のパートナーシップを構築する必要がある。議会制民主主義と資本主義など既存の政治・経済体制の枠内で改良に努める社会民主主義政党に変化すれば、野党連合政権は一気に実現に近づくであろう。
現在、日本にも社会党から党名変更した社会民主党が存在しているとはいえ、二〇二〇年末の分裂と立憲民主党への合流により国会議員が半減し、存亡の危機に瀕している。こうしたなか、社会民主主義政党に移行すれば、より中道に位置する立憲民主党などと緊密に連携し、衆議院の小選挙区比例代表並立制のもと、自民・公明両党に対抗する強力なブロックを形成できる。日本政治のこうぞうは大きく変わるに違いない。
もう一つの選択は、民主的社会主義への移行である。
民主的社会主義は、マルクス主義を含む多様な社会主義イデオロギーに立脚し、反資本主義や反新自由主義など旧来の階級闘争的な政策に加え、エコロジー、ジェンダー、草の根民主主義などニュー・レフト的な課題を重視する。左派ポピュリスト戦略とも親和性が高く、直接的な市民参加を通じた人々の動員に活動の力点を置く。序章で詳しく論じたように、現在、ドイツの左翼党、ギリシャの急進左派連合、スウェーデンの左翼党、スペインのポデモスなど、ヨーロッパの主要な急進左派政党が、ここに位置する。一九五五年体制下の日本社会党も、これに近い性格を持った。
近年、日本共産党は共産主義を維持しつつも、かつての社会等と同様にご軒家非武装中立を唱え、脱原発、ジェンダー平等、国際的な人権保障などを重視している。その意味で社会民主主義化よりも障害が少ない路線変更の方向であり、若者などからの支持の拡大に寄与するであろう。
(p401-402)

  という。
  中北の路線転換の「二つの選択肢」は希望的観測の類ではあるまいか。日本共産党にとって「民主集中制」と「民族民主革命論」を乗り越えるにはハードルが高い。
  
  

2023年09月25日