「利用者を否定しない棚」(『図書館人への言葉のとびら』内野安彦.郵研者.2022)残日録

帯に
一図書館人として道標となることばをひたすら探すことで、迷い道から抜け出せたり、鼓舞されたり、ときには「これでいいのだ」と自信を深めることができました
とあり、69の言葉が取り上げられている。もちろん図書館員の言葉もあるが、出版関係者、書店などからも取り上げられている。私の言葉も取り上げられていている。

「選書の中に利用者像あり」がそれで、
「本を選ぶということは、その図書館の政策の現れです。それは、サービスの対象である利用者像なくしては成りたちません。利用者像はカウンターでの仕事によって養われ、非利用者への想像力、また具体的な調査などによって、ふくらみます。意識するにせよしないにせよ、選書のなかに利用者像があります」
が引用されている。
それにご自身の体験談が続く。(p66)

その次に「利用者を否定しない棚」という言葉が、嶋田学氏の言葉として取り上げられている。この言葉は明定義人にプライオリティがある言葉ので、ちとややこしくなる。
『現代思想』第46巻第18号「図書館と「ものがたり」地方から考えるこれからの図書館」という嶋田氏の論考からの引用である。
島田氏によると「利用者を否定しない棚」を本来、引用注記をつけるべきところを私のミスでつけられないまま掲載されることになりました。これでは、私の地の文における強調表現取られてもしかたありません。後日、その言葉の注記のないことに気づき、明定に詫びを入れておられる。
内野氏の著書が出版されてしまったので、嶋田氏は混乱を招くことにならないように、図書館雑誌の投稿欄「北から南から」に投稿する、とのことだそうだ。
内野氏には「利用者を否定しない棚」はパラダイムとして、普通名詞化の道をあゆみはじめたのかも、しれません! そうなると、嬉しいですね。と連絡しておいた。
その後、図書館のOBになりたてのA氏に、こんなことがあったと話したら、(その言葉は)あちことで使っていますよ、と言われた。どうも、私からは離れて、一般名詞になっているのかも、と思った。
2017年の島田氏の講演レジュメでも「利用者を否定しない棚」とカギカッコで強調しているだけなので、島田氏のなかでも一般名詞化が進行していたのではないだろうか。

2022年09月25日