『迷走する民主主義』森政稔.2016.3 残日録211102 

著者の森は1959年生まれ。私より7才年下。団塊の世代に近い私と違って、全共闘世代と距離をもっての思考の所為を感じる一冊です。

 じつをいうと、本書はもともとずっと以前の政権交代時、民主党新政権が圧倒的な支持を得ていたときに、これではまずいのではないかと言おうとして構想しはじめ、その後、政治の変化に応じて何度も書き直してできたものである。私の政治についても見通しなど、これまで当たったことはないが、今回は例外だった。
 小泉政権以来、新自由主義にシフトした自民党政治に対する批判者として、私は民主党の存在に意義があると考えてはきたが、二〇〇九年の政権交代時の民主党のマニュフェストの内容および政治権力についての考え方に接して、それらには大いに問題があるように思われた。それにもかかわらず、メディアや世論がお祭り騒ぎに浸っているのは、かえって将来的には大きな反動をもたらす恐れがあり、民主主義思想からする問題点を書きとめておこうとしたのが、本書の出発点だった。その結果は予想以上の速さでの民主党政権の失墜であり、そのために本書のもともとの案(本書第Ⅱ部を中心とするもの)は、批判の対象と発表の機会を失ってしまった。
 しかいいろいろと迷ったあと、民主党政権の問題点を検討したもとの部分に、その後書き加えた部分、すなわち、現代社会の変動のなかで民主主義が直面している困難についての考察(第Ⅰ部)、そして金融恐慌や大震災というカタストロフを経て民主主義思想が何かを考えるべきか検討した部分(第Ⅲ部)を合わせて、あらためて世に問うことにした。(p12-13


とあります。
「第6章 民主党政権の失敗——その政治思想的検討」の部分だけでも、民主党関係者にどれほどの影響を与えたのだろうか、と思う。政治家や支援者は本を読む時間がないのかもしれない。また、話題にすることがないのかもしれない。そう思うと寂しい気がします。少しは影響があったのだろうか。そう思うと寂しさが増します。
大平正芳や前尾繫三郎といった政治家であり読書家が語り継がれているのだが、今日では誰なのだろう。村上誠一郎あたりかな。

2021年11月02日