主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善)

教育心理学の三宅なほみ氏が癌により逝去された(1946年―2015年)のは残念であった。死の翌年に『協調学習とは 対話を通して理解を深めるアクティブラーニング型授業』(三宅なほみ・東京大学CoREF・河合塾編著,北大路書房,2016)が出版された。そこでは「知識構成型ジグソー法」の取り組みが提案されている。生きておられたら、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善)に大きな役割を果たされたと思う。

「ジグソー法」はアメリカのアロンソンによって編み出された「共同学習を促すための学習方法である。東京大学CoREFのHPによると、「知識構成型ジグソー法」はアロンソンの「ジグソー法」とは異なる狙いや手法を持つ、CoREF(大学発教育支援コンソーシアム機構)が独自に開発した学習法である。HPを見ると、大学の授業でも使えそうな定番教材がある。

この機構の副機構長として、三宅氏はこの取り組みをリードした。前職の中京大学での「単純ジグソー」の取り組み(1991~2007)からはじまり、多様な学習法を組み合わせながら学びをデザインした。東京大学に移籍(2008)後、学習科学の理論に基づく対話型授業「知識構成型ジグソー法」という授業法と、評価の手法としての「授業前後理解比較法」と「多面的対話分析法」という評価手法の研究をした。

三宅氏のご講演を仮説実験授業研究会の会で聴く機会があった。その時のお話は興味深いものであった。

日本でアクティブ・ラーニングというと、仮説実験授業が取り上げられたりする。

仮説実験授業は心理学者の波多野誼余夫がアメリカで紹介している。同じような教授法が1980年代以降英米でもあるようだが、波多野の影響がどれほどのものなのかはわからない。ただ、認知心理学・教育心理学の研究者にはよく知られていたと思われる。三宅氏のお話では、波多野誼余夫は自分が日本語で書いたものは「論文」に数えないそうであった。ウィキによると、欧米7つの学会誌の編集委員を務めた、とある。

2019年に板倉の原著論文といくつかの授業書の英訳本が出版された。これの反響も知りたいところである。

2020年から全面実施される「主体的・対話的で深い学び」はどうなるのだろう。

20200311

2021年01月09日