マリッジ・イクオリティ(同性結婚の許可も含め、結婚が誰にも開かれた人権だとする考え方)残日録210714
『ゲイカルチャーの未来へ』田亀源五郎.Pヴァイン.2017 より。
編集者から問いが投げかけられる。
『弟の夫』ではあくまで涼二とマイクの一対一のパートナーシップに焦点が当てられている。そうしたモノガミー(一対一の性愛関係)に対するポリアモリー(三人以上の複数人による合意の上の性愛関係)、あるいはオープン・リレーションシップ(パートナー関係において、お互いの合意の上で他の人物との性愛関係を許容している状態)の是非は、ゲイ当事者間でマリッジ・イクオリティを考える上でしばしば議論に挙がるトピックだ。
これに対して田亀は、
ポリアモリーの話は意識的に省いています。そこまでみんな、ついてこられない。芸能人や政治家が不倫しただけで、これだけ球団される世界では無理ですね。それひとつで新しく別の話を描くのならともかく。ポリアモリー自体、この間はじめてコロンビアで制度として認可されましたけど、男三人夫夫というのは私の身近でもいたし、私自身がそれに近い状況だったこともあったのでけっして珍しくはないです。ただ、それを今の社会制度と適合させるのはすごく難しいだろうな、とは思います。パートナーシップが男女であるか男男であるか女女であるかという話と、一対一の契約なのか三の契約も含まれるのかという話は、ベクトルも違えばフェイズも違う気がするんですね。制度の中の組み合わせを変える話と、制度自体を変える話ということですから。そこまではちょっと作品のなかでは負いきれない。たしかに三人で暮らしていれば、家族になれる制度があったほうがいいだろうなとは思いますけどね。
オープン・リレーションについても、正直私はどのくらい機能しているか疑問です。そのルールに人間の心がどれだけ順応できているのかということを考えると、どうなんだろうと。というのも、実際トラブっている例をけっこう見ていますから。まあでもこういうことは、当事者がどう考えるかというのが一番重要なことで、第三者があれこれ言うようなことでもないと思います。それでも制度的なことも絡めた視点から言うと、婚外セックスの問題については、私は男女のほうで話を進めていてほしいんですよ。結婚生活をキープするために互いに外で自由にセックスをするというのは、すでに結婚している状態のパートナーと関係を維持していくための方法論ですよね。ゲイはそれ以前ですから。同性婚ができるようになったら、それを維持するために婚外セックスの話をするのもいいんだけど、同性カップルに関してはそれ以前の段階なのだから、だったらまずこちらはパートナーシップを維持するためのものではなく、パートナーシップを保証してくれる制度をつくりましょうよ、ということです。
とこたえている。(p44~46)
少子化について、出生率の低下について、子どもを産みやすく育てやすくしましょう。という掛け声はあっても、フランスのように事実婚が制度的に認められてはいないし、生まれる子どもの半数が婚外子という状況も生まれていない。
(孫引きだが、OECDの提言(2005)によると「育児費用のため税金の控除や児童手当の増額を行うこと」「正式な保育施設を整備強化すること」がポイントのようだ。)
マリッジ・イクオリティはLGBTに限られているわけではなく、まずは男女の課題であって、結婚生活と性愛の多様性については、男女間においてもクローゼットである。明治以来の一夫一妻制が極めて禁欲的であるのはキリスト教の影響なのか。
マリッジ・イクオリティという言葉はこの本で初めて出会った。夫婦別姓あたりでうろうろしている現状からはまだまだ遠い。