『人新世』の「資本論」』斎藤幸平著.集英社新書.2020 残日録210621
「人新世」Wikiによると、じんしんせい、とも、ひとしんせい、とも読む。斎藤は「ひとしんせい」とルビをふっている。この本がよく売れているらしいので、こちらの方が通用することになるのだろうか。新人世しんじんせい、とも訳されているそうだ。Anthropoceneの訳で、読みは「アントロポセン」。
「地球の大気に関して直近数世紀の人類行動の影響が新たな地質時代を構成するほど重要であると考えた待機化学者パウル・クルッツェンによって2000年にこの用語が広く普及した」とある。
本のカバーに、
人類の経済活動が地球を破壊する「人新世」=環境危機の時代。気候変動を放置すれば、この社会は野蛮状態に陥るだろう。それを阻止するためには資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならないが、資本主義を捨てた文明に繁栄などありうるのか。/いや、危機の解決策はある。ヒントは、著者が発掘した晩期マルクスの思想の中に眠っていた。世界的に注目を浴びる俊英が、豊かな未来社会への道筋を具体的に描きだす。
とある。
著者は、1987年生まれ。大阪市立大学大学院経済学研究科准教授。2018年邦訳『大洪水の前に』によって、権威ある「ドイッチャー記念賞」を歴代最年少で受賞。
この人のおかげで、1952年生まれの小生はまた過去の人の道を数歩前進することになった。加齢とはそういうことでもあるのだ。
資本制経済が「コモン(共有財)」や「アソシエーション(共同)」を解体していき、中間共同体が弱化して個々人の生がバラバラになる状況についての分析はなるほどと読んだが、その解決策については、あまり材料を持っていないように思った。
世界のグローバル化がより進行するという説もあるが、化石燃料の枯渇というより、高騰化や非効率化によってブロック経済化するという説もある。そうなると、遠方との物流を維持できるのは、付加価値の高い嵩の高くないものではないか。3Dプリンターが解決してくれることやAIによる労働環境の変化など、「人新世」=環境危機の時代に論じることは多岐にわたるだろう。
解決策はプラグマティックに見いだすしかない時代である。
土曜日のTV番組の「博士ちゃん」に登場する青少年は、未来について語らないけれど、そのうち未来について語る博士ちゃんが登場することだろうと期待している。