残日録23 如是閑「パラドックス」から

 長谷川如是閑等の創刊による「大正から昭和初期の高級評論雑誌」(世界大百科事典第2版)の「我等」の大正13年12月号を物置から発掘。

 如是閑「パラドックス」から

「徳行」は屁と同じだ、大抵は高い音を立てゝそれをする。したものだけが馬鹿にいゝ気持ちで、他はたゞ「臭い」と感ずるだけのことが多い。

「孝行」は百日咳のたぐひだ。それをしている子供を見ると、堪らなく可哀相になる。自分の子が百日咳をせくのを喜ぶ親でなければ、つゞけざまに孝行する子供を嬉しがれまい。

「勇気」は糞尿だ。或る場合には同うして出さぬ譯には行かぬものだが、飛汁を浴びせられたものは災難だ。

「果断」とは外科医の勇気のことだ。一刀両断! 但し痛い思ひをするのは他人だ。

「信仰」とは「間抜け」の一種だ。だまされたことを憤るのが間抜けで、だまされたことを感謝するのが信仰だ。

「慈善」はカビの一種だ。それは食卓の余り物に咲く花だ。

2018年08月26日