残日録22 健一居士

 「ビックリハウス」という面白雑誌があった(1975~1985)。鬱気味で気分がすぐれないので、2度、投稿した。「エンピツ賞」は4作ほどまとめて送ったが、どれも予選敗退。いいところまでいったものは、たぶん「エピクロスの空隙」などという難解な言葉のせいで入選落ち。

 「3ワーズ・コント」のほうは最優秀賞、優秀賞の次、準優秀賞。「きんとん・ごまめ・たずくり」を」入れ込んでコントをつくる。

 

本当のような話

        健一居士

 国境の長いトンネルを通らなければ話がはじま

らないわけではなく、トンネルを出たとしてもそ

こが雪国であるとはかぎらない。

 そういうことはどこからはじめてもよいこと

で、金東号に乗って8時間たつというのにまだ沼

津あたりというのも、東京が江戸と呼ばれていた

頃の面影を残している明治のおわりの話だからと

いうことになる。

 窓のそとは曇天で富士も見えず、どこにでもあ

るという風景である。それを飽かずに眺めている

男が丹羽という名前で、越後、豆崎に産というこ

とにする。

 となりに女がすわっている。とりたてて名前を

つけるほどの役割を演ずるわけではない。女が腹

痛をおこした時、丹羽が持っていたヅクリンをの

ませただけのことである。ヅクリンは当世流行の

和漢薬で丹羽はこれを打って生計をたてていた。

 何の表向きの根拠もなしに頭に浮んだのが事の

発端といえなくもない。――

兵庫県加古川市西神吉町岸438明定義人(24歳)

 

と掲載されている。

 

選評ノート●多彩な表現形式が現われて、なんと

もその頂点をみきわめることは大難業だ。一体何が

良いのかどうか、もうさっぱりわからないのれあ

った。ドドメーン! というとこで、芥川賞を

選ぶのもたいでしょうねってのもわかるのだ。

……健一居士君のはパロディックで良かった。

ところで1ト月にすうひゃくの同じテーマを見て

いると、よっぽど斬新じゃあないと気にとまらな

い。かといって斬新さだけでもペケになるのだ。

 

当時は個人情報について無意識だった。

 

2018年08月21日