長月雑記2 図書館の「課題解決支援サービス」など 残日録240926
図書館界で「課題解決支援サービス」というのが流行った時期があった。「資料提供(貸出)」をしているだけではだめだ、という風潮と相まって、鬨(とき)の声を上げていた。
当図書館では「課題解決サービス」をしております、という観光地の図書館があった。蔵書検索をしてみたら、当時の高月町立図書館より関係書が少なかった。HPに「課題解決」向けの検索があったように記憶している。なにかにそのことを館名を伏せて書いた。しばらくしたら、書いたせいでもないのだろうが、「課題解決」の看板は消えていた。
ビジネス支援、をはじめいくつかの課題解決のモデルがあったと記憶している。
そういう看板を掲げなくとも、高月町立図書館は「学校・学校図書館支援」に取り組んでいた。それが「地域課題」であると考えていたからのことで、それは特別な課題ということではなく、図書館があれば、どこでも課題となることであった。
看板だけの課題解決について書くことはない。
「課題解決支援サービス」のなかでの「ビジネス支援」は、さも「起業コンサルタント」ができるような気分で書かれたのもあったと記憶している。
おいおい、と思った。「本」になったものなど、たかが知れているのだ。専門の研究書やレポートの鬱蒼とした藪の中を道案内できる技量がある司書がそんじょそこらにいるわけがない。おればコンサルになっている。
何かを検索していて、「月刊 ほんコラム」を見つけた。「IRI(Intellectual Resource Initiative)」=「知的資源イニシアティブ」が出している。
そこに山重壮一氏が「課題解決支援サービスの課題」と題して書いている。誰の向かって書いているのか、よくわからない文ではあるが、よく書かけている。(山重氏は図書館に向けて書くのは苦手のようだ)
「図書館の課題解決支援サービスは、できることから始めるしかないとは言っても、余興でやるようなものではないので、イベント開催に終始している現状から一歩進んで、図書館と図書館情報システムの核となるサービス(貸出しやレファレンスによる資料・情報提供)の本質的変革につながっていくことが重要だ。」とまとめている。
課題も解決策も読ませる。関係者には一読を薦めたい。
私は東條由紀彦(1953~)という研究者を稲葉振一郎『市民社会論の再生』でたぶん初めて知った。活字を見たことはあったかもしれないが記憶にはない。研究者で知る機会があるのは啓蒙的な雑誌や新書・叢書などに書く人たちで、東條を知らなかったのは致し方がない。
研究者が論文以外のところに書くのは、学会的に評価されないこともあるだろう。それでも、研究者にいろんなメディアで出会うことがある。研究論文ではない一般人が少し背伸びすれば読めるような本を書ける人というのも限られているだろう。いろんな分野の研究・研究者を知ることは、意識的に取り組まないと難しい。
長らく図書館業界にあっても、中小規模の市町村立図書館の職員だと、諸分野の研究論文にまで目配りすることは殆ど無いと思う。個人的に関心のある分野だとか、その土地の特徴やその館の特別なコレクションに関係しているとか、という理由で特定の分野の領域の論文に目配りをしている図書館員はいるだろうが、私はそういう立場でもない。ごく普通の図書館員として、一般書や教養書といった言葉でイメージできる程度の範囲の紙媒体の資料を対象に「資料を知る」ようにしてきた。
好み、があり、散漫な性格があり、ひとり酒に時間をとられる、ので自慢できる程ではない。老いた今となっては、「あれこれ」に関心を持ち、読書に時間を割かなかった若い頃の「あれこれ」を良かったと思いたいが、それでももう少し本に時間を注いでおけばよかっただろうに、と思う。
一般書・教養書に目配りをするだけでも精一杯だった、とはいえない、「あれこれ」に気をとられ日々も懐かしくもある。
「あれこれ」の雑念は老いたとは言え、今もあって、面白いのを見つけた。
〇〇さんが(彼の部下)
〇〇さんの(彼の補佐役職)威圧的な言動に怒っていて
労基に行くゆうてはりますわ
(後日)
労基へ従業員が通報
労基から会社代表電話に連絡があり 担当支店の責任者として 対応に当たる
その件を本人には 軽く伝えてから 変化や様子を見たくて 一日中張り込みました。
疲れます。
そして伝えてから 6時間が過ぎて
『年内で退職します』
と本人から辞表提出
思い当たることあるかーい
いつぞやの新人研修で 経験談を話す機会があり 彼も受講者として参加していたので
彼に向かって 『僕が貴方の支店に行く時に何に 1番神経を使い果たしている? 何か気付くこと ありますか?』と問うた
『良い従業員を効率よく働かせているか? ですか?』と答えた
そんなもん どうでも良い 良い従業員、て何?
人を効率的に働かす? なんじゃそりゃ
そんな発想微塵もないわ‼︎
それぞれの得意が伸びたら良いんよ
『あなたの支店は従業員が多いので 従業員を笑かすことに物凄く神経を 使い果たしています』と答えた
その彼も
他の参加者も
ポカーンとしていた
だって笑うてことは その瞬間は 楽しいてことやん
だから笑かすことに 全神経を注いでいる
こういう生活綴方を「よもやまばなし」として集めると、「抵抗者文芸」のようなものになるように思う。置かれた境涯を悲嘆することからではない「生き延びるためのことば」集、だな